なぜ炭酸の泡はシュワシュワ?石灰石と塩酸で解き明かす二酸化炭素の秘密(二酸化炭素の発生実験 )

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

ジュワっと弾ける炭酸飲料の泡、お風呂に入れるとシュワシュワと溶ける入浴剤。私たちの身の回りには、たくさんの不思議な「泡」が存在します。この泡の正体、実は多くが「二酸化炭素」という気体です。目には見えず、手で触れることもできないこの気体を、探し出し、その正体を暴く科学実験に挑戦してみませんか? 今回は、中学校の理科でもおなじみの実験を通して、見えない気体を「捕まえ」、その性質を明らかにする方法をご紹介します。

探偵の七つ道具はこちら!準備するもの

まずは実験を始めるための材料をチェックしましょう!これらが今回の事件を解決するカギとなります。

塩酸 5%(5mLくらい)

石灰石(小さなかけらを1つ)

塩酸

石灰石

その他:マッチ、線香、燃えさし入れ、石灰水(5mLほど)、濡れ雑巾(安全のための相棒です!)

第一の現場検証:シュワシュワの泡を捕まえよう!

1. 二酸化炭素を発生させよう!

二酸化炭素の発生

試験管に塩酸を5mL注ぎ、そこへ犯人の手がかりである石灰石を投入します。すると、シュワシュワッと激しく泡が発生!これが、目に見えない気体、二酸化炭素が生まれている決定的な瞬間です。この現象は、石灰石の主成分「炭酸カルシウム」と「塩酸」が化学反応を起こしている証拠です。化学の世界の言葉で書くと、こんな事件が起きています。

CaCO₃ (炭酸カルシウム) + 2HCl (塩酸) ⟶ CaCl₂ (塩化カルシウム) + H₂O (水) + CO₂ (二酸化炭素)

石灰石が塩酸に溶けることで、水と塩化カルシウムという物質に変化し、そして今回の主役である二酸化炭素が気体として飛び出してくるのです。

第二の証拠:石灰水が語る真実

2. 石灰水で確認!

次に、捕まえた気体を2本目の試験管に入れた透明な石灰水に通してみましょう。試験管を軽く振ると…なんと、魔法のように透明な液体が白く濁ります!これは決定的な証拠です。

白く濁った石灰水

なぜ白くなるのか?実はここでも化学反応が起きています。石灰水の正体は「水酸化カルシウム」という物質。これが二酸化炭素と結びついて、水に溶けない「炭酸カルシウム」の白い粒になるのです。そう、実験の最初に使用した石灰石の成分に逆戻りしたわけです!科学って、まるで壮大な物語のようですね。

第三の証言:火が消える謎

3. 火をつけた線香でテスト!

最後の仕上げです。気体を入れた試験管に、火をつけた線香をそっと差し込んでみましょう。すると…燃え盛っていた炎が、まるで息を吹きかけられたかのようにフッと消えてしまいます。

線香の火が消える

これは、二酸化炭素が「燃えない(不燃性)」気体であるという重要な性質を示しています。それだけではありません。二酸化炭素は空気よりも重いため、試験管の下の方に溜まり、物が燃えるために必要な酸素を追い出してしまうのです。この性質を利用したのが、二酸化炭素消火器です。

小さな泡から、大きな地球へ

今回の科学探偵ごっこ、いかがでしたか? 私たちは3つの確かな証拠を集め、目に見えない気体の正体が「二酸化炭素」であることを突き止めました。

  1. 石灰水を白く濁らせる。
  2. 火を消す性質がある(燃えない・燃えるのを助けない)。
  3. 空気より重い(今回は直接見ていませんが、火が消える理由の一つです)。

この二酸化炭素の性質を知ると、私たちの生活や地球環境とのつながりが見えてきます。炭酸飲料のおいしさから、火事を防ぐ消火器の仕組み、そして地球温暖化という大きな問題まで。たった一本の試験管から始まった小さな泡が、私たちの住む大きな世界へとつながっているのです。

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